「逃げ癖」ついていませんか?仕事への影響と克服する方法について解説

ストレスやプレッシャーを感じる物事や、困難な状況に直面した際に、つい回避してしまうことはありませんか。そのような「逃げ癖」がつくと、周囲に迷惑をかけ、職場での信頼を失うといった事態を招いてしまうかもしれません。本記事では逃げ癖のある人の特徴やその原因、克服する方法などについて解説します。

目の前の仕事からの逃げ癖がついてスマホを見る男性

困難やプレッシャーに直面した際に、つい回避してしまうことはありませんか。逃げること自体は悪いことではないのですが、何度も繰り返して「逃げ癖」がついてしまうと、いざという時に困ったことになってしまいます。

今回は、逃げ癖のある人の特徴や仕事に与える影響、克服するための方法などについて公認心理師の川島達史さんに伺い、分かりやすく解説します。

そもそも逃げ癖とは?概要を解説

ストレスを抱える仕事から目を逸らす様子

「逃げ癖」とは、ストレスやプレッシャーを感じる物事や、困難な状況に直面した際に、積極的に対処せずに回避してしまう癖のこと。

この癖は主に緊張や不安、恐怖心に起因していることが多いです。タスクや課題に対して、本来はやるべきこと、やったほうが良いことという認識が自分の中にあるにもかかわらず、やらずに逃げることが癖になっているケースが逃げ癖に該当します。

逃げ癖は悪いこと?

逃げること自体は、生物の本質的な行動と言えます。人間を含めすべての生物は「逃げる」という選択肢を持っていて、この選択肢がなければ生き延びることができません。逃げることはもともと肉体を守るために機能していましたが、現代では精神を守るために「逃げる」選択肢をとることが多い傾向にあります。

逃げることを危機回避として捉えれば、悪いことではありません。例えば、職場でのハラスメントに悩んでいる、長時間労働が多いなどのケースでは、肉体的にも精神的にもリスクがあります。自分を守るために、このようなリスクから逃げることは、必要なことと言えます。

一方で、プレッシャーやストレスが多少かかるけれども、自分のためになるような、今やるべきタスクや課題などの対象から逃げること、それが癖づくことは決して良いこととは言えないでしょう。逃げ続けてしまうと、身につくはずのスキルや経験が得られなかったり、機会損失につながったりする場合があります。

危機回避として逃げる選択ができるのは理想的なことです。そういった意味では悪いことではありませんが、「面倒くさい」などの気持ちや過剰な反応による逃げが「癖」になってしまうと、ビジネス的には問題になってしまうおそれがあるのです。

逃げ癖がある人の特徴

ネガティブなことが起こり行動できなくなる様子

逃げ癖があると言われている人にはどのような特徴があるのでしょうか。その行動傾向について解説します。

ネガティブな経験がある

逃げ癖がある人は、過去にネガティブな経験をしていることが多いです。心理学には「条件付け」という用語があり、これはネガティブな出来事が起こるとその行動を回避し、ポジティブな出来事が起こるとその行動が促進される傾向にあるという、条件によって促される行動が変わることを指します。

逃げ癖は、過去のネガティブな経験が考え方に紐付き、今の行動や癖に結びついている可能性が高いと考えられます。

自己効力感が低い

自己効力感とは、課題に対して「自分の力で解決できる」という感覚のこと。逃げ癖がある人は、この感覚が低いか、もしくは持てていないという特徴が挙げられます。そのため、課題を「乗り越えられる」というイメージが持てず、その対象から逃げてしまう傾向にあるのです。

安定志向

逃げ癖がある人は、リスクの高い課題に取り組まず、安定志向であることが多いです。安定志向を持つのは悪いことではありませんが、その分、スキルアップやキャリアアップのための機会損失につながりやすいとも言えます。

安定志向になる理由としては、難易度の高い課題に立ち向かうなど、行動することで経験や成功体験が得られるという想像力が不足している可能性が考えられます。

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逃げ癖がつくと仕事やキャリアにどんな影響がある?

「逃げ癖」があり周囲に呆れられる様子

一般的に「逃げ癖」がつくと仕事やキャリアにどのような影響があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

周囲からの信頼を失ってしまう

仕事では、業務で生じた課題を解決することや、責任を持ってタスクを遂行することが求められます。しかし、逃げ癖がついている人は、自分にとって困難だと思う状況に直面するとそれを避けようとしてしまいます。そこで課題解決の依頼を断ったり、結果的に他人に責任を押しつけたりすることが発生するのです。

こうした行動は、同僚や上司に対して「信頼できない人」という印象を与えてしまう可能性があります。

進行に遅れが出る

タスクやプロジェクトの進行は一定のスケジュールに基づいて行われるものですが、逃げ癖がついていると、進行に悪い影響をおよぼしがちです。これは、困難な課題やプレッシャーのかかる状況に直面したときに、それを避けてしまうため、必要な対応が遅れるからです。その影響が次の工程にかかってしまうと、結果として全体のスケジュールに大幅な遅れが出ることも考えられます。

スキルアップが難しくなる

逃げ癖がついていると、困難な課題や新しい仕事への挑戦をはじめ、プロジェクトリーダーなどの責任のある仕事を、不安やプレッシャーという理由で避け、単調で慣れた仕事を続けるだけになってしまいます。それによって経験が得られず、スキルアップの機会を失ってしまうのです。

多くの場合、スキルアップには失敗や試行錯誤が伴いますが、これらは成長に不可欠な要素とも言えます。しかし、上長から「挑戦を避ける人」と見なされてしまうと、キャリアアップにつながるような重要な仕事を任されなくなるおそれがあります。

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逃げ癖がついてしまう原因は?

「逃げ癖」について同僚からダメ出しを受ける様子

なぜ、逃げ癖がついてしまうのでしょうか。その主な原因として考えられるものについて解説します。

過度に安全行動をとっている

「安全行動」とは心理学用語の一つで、緊張や不安、恐怖などを感じる対象から自分を安全なところに移動させ、不安を緩和するために安全策を張ろうとしたり、不安をコントロールしようとしたりする行動のことを指します。

安全行動自体は悪いことではありませんが、過度にこの行動をとってしまうことによって、それが癖となってしまうのです。また、一度対象から逃げた経験は、二度目以降に感じる不安を強めてしまうため、余計に逃げ癖が悪化してしまうケースもあります。

感情で行動しすぎている

心理学では「自動操縦」という用語があります。自動操縦とは、行動を認識せず、感情によって行動してしまうこと。逃げ癖がある人の中には、不安感や恐怖心に支配されやすく、その感情のまま動いてしまう人が多いです。不安感によって、課題などの対象から逃げるような行動をしてしまうことが増えると、気がついたら癖になっていたということになりやすいです。

失敗過敏になっている

失敗過敏というのは、失敗を極度に恐れて、そのイメージに囚われてしまうことです。失敗に対する過剰な不安や恐怖が心理的負担としてのしかかってくると、逃避行動をとり、それが続くと癖となってしまいます。

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逃げ癖を克服するための方法

成功をイメージして前向きに働く様子

では、ついてしまった逃げ癖を克服するためには具体的にどういったことをすれば良いのでしょうか。日常的にできる克服方法を紹介します。

スモールステップで経験を積む

逃げ癖を克服するには、不安をなくすことから始めましょう。そのためには、段階的な成功体験を繰り返すことによって自己効力感を高める必要があります。

まずは、小さな目標を達成することで自信を徐々に積み重ねていく、スモールステップで経験を積むことが効果的です。この方法なら大きな挑戦を行う場合でも心理的な負担が少なく、成功率を高められるでしょう。例えば、これまで会議で発言することを避けていたのであれば、1つでもいいので、質問を考えながら会議を聞くなどがおすすめです。

逃げ癖を客観視する

感情で行動したり、引っ張られたりすることなく、その対象から逃げるべきなのかどうか、冷静に判断する必要があります。

そこで、自分の感情や考えを、一度俯瞰してみましょう。具体的には、その対象について書き出して整理する方法が効果的です。その際には、自分の感情でなく、実際に起きている事実だけを書き出すと、より客観的に考えることができるでしょう。

成功するイメージを持つ

仕事において、リスクを減らすために失敗する可能性を考慮することは必要ですが、成功して上手くいくイメージも大切にするべきです。

成功するイメージを持つことで、自分が目標を達成する姿を具体的に描くことができます。その結果として、自信が得られ、行動への不安や恐怖が軽減されるのです。このようなポジティブな思考は、行動するための動機を高める効果もあるので、ネガティブな思考による逃げ癖を改善することが期待できます。

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本当に逃げてもいいケースもある?

休息を取るべき人のイメージ

「逃げ癖を克服したい!」と考える人は多いかもしれませんが、「逃げること=悪」ではありません。場合によっては逃げてもいいケースがあることを知っておきましょう。

例えば「新しいプロジェクトへの参加を打診されたが、すでに業務過多で体を壊しそうな状況」など、その課題や対象に対して行動するときに、その選択が80%以上失敗となるだろうと予想される場合は、逃げても問題ありません。

また、仕事をしていると、失敗することもあるでしょう。失敗を重ねてしまうと、自信がなくなり、逃げ癖につながることも多いです。そのため、まずは成功体験を得ることに注力し、ポジティブな経験を積み重ねられるよう行動することを意識しましょう。

もし目の前の対象から逃げるべきかどうかを悩んだ場合は、キャリアアップにつながる可能性が高かったり、自分がやってみたかった内容であったりということであれば、チャレンジしてみることがおすすめです。

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やるべき目的をしっかり保つことが必要

逃げるという選択は生物の基本なので、それ自体は問題ありません。ただし、逃げることが癖になってしまうと、仕事では機会損失につながるなど、自分の将来やキャリアのためにならないケースがあります。もし、逃げることがすでに癖になっていて、克服したいと考えている場合は、紹介したような方法を用いてみましょう。

課題や困難な状況に対してチャレンジできることは、自身にとってプラスに働くことも多いです。仕事に対する逃げ癖を克服し、前向きに取り組めるように心がけましょう。

監修:ダイレクトコミュニケーション 代表取締役 川島達史
目白大学大学院心理学研究科を修了し、現在ではコミュニケーション講座の講師として、心理学や人間関係に関するワークを行う。専門は成人のソーシャルスキルが孤独感・対人不安に与える影響。普段は「コミュニケーション講座」の主催や、YouTubeチャンネル「ダイコミュ大学」による情報発信を行っている。

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