疲れが取れない原因を突き止められる!
体が疲れていたりだるくなっている状態を、私たちはなんとなく「疲労」だと思っていますが、疲労とは具体的にどんな特徴があるのでしょうか?
「疲労は高血圧や糖尿病など他の疾患と違って、そのつらさを他人に分かってもらうことができないのが特徴です。本当に疲れて動けないのに、それが他の人からダラダラと怠けているように思われたり、体がつらくて会社に行けないことが、うつだと誤解されてしまう場合もあるのです」(梶本修身さん:以下同じ)
梶本さんが院長を務めている「東京疲労・睡眠クリニック」では、疲れを分かりやすく数値化し、患者さんの疲れを具体的に示すようにしているのだとか。
「疲れを数値で表し可視化することは、どれだけ疲れているかが、自分だけでなく家族や上司に認識してもらえるというメリットがありますし、疲れの原因も見つけることができます。過労によるものであったり、睡眠の質の悪さが起因の場合もあるので、それが判明することで適切な治療が可能になるのです」
疲労なのか、もしかしたらうつ病なのか。判断するのは難しい気がしますが…。
「そうなんです。うつになると疲れた感じがするし、疲れによっても鬱々(うつうつ)とした気持ちになる。ただし、うつ気分とうつ病は病態が違います。例えば身内や知人に不幸があった場合、悲しくてうつ状態にはなりますが、それをうつ病とは言いません。
うつ病というのは、脳の中にあるセロトニンなどの異常で生じる病気。外的な要因が原因でなく自分の中から起こる病気なので、うつ病なのか疲労からくるうつ状態なのかの判断は、専門医でないと難しいですね」
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疲れが取れない原因は自律神経の疲れ
そもそも疲労を起こす原因とはなんでしょうか? 率直にこの気になる質問をぶつけてみました。
「運動による疲労は、これまで筋肉や内臓系の疲弊だと思われてきましたが、実はそれらの影響というのは少ないのです。運動中に呼吸や心拍、血圧、そして体温など身体の安定性を保つため、休まず調整を行っている自律神経中枢の疲労であることが分かりました。
実際、3キロ走るだけでも真夏の炎天下と気候が穏やかなときでは、運動量は同じなのに疲労度は全く違いますよね。
ウエイトトレーニングとか、ボクシングや登山など筋肉を痛めつけるような特殊な運動をしない限りは、私たちに日常生活で起こる過労はほぼ自律神経の疲労と思っていいでしょう」
取引先との商談や月々の売り上げ管理など、常に緊張感がある営業職のような仕事をされている人は、交感神経が疲れやすく最も自律神経が疲弊するのだそう。
また、仕事で行き詰まったり人間関係でストレスにさらされるときも、交感神経が高ぶってイライラするため自律神経に負担がかかると梶本さんは言います。
では、自律神経に疲れがたまると、具体的にどのような症状が起こるのでしょうか?
「自律神経に疲れがたまると、体を安定させることができなくなります。頭が重くなる、ろれつが回らない、音が聞き取りづらい、さらには体のバランスが保ちづらくなり、汗をコントロールできなくなるなどの問題が起こります。
他には自律神経が正常でないと睡眠のリズムが作れなくなり、疲れを取りたくても自律神経が回復せずにどんどん疲労がたまるという悪循環を起こしてしまいます。それ以上に恐ろしいのが、自律神経が疲れすぎると血圧が上がって脳卒中を起こしたり、心拍のコントロールを失って心筋梗塞などが起こりやすくなること。これが過労死を招く原因になるのです」
疲労を軽減するには、鶏の胸肉を食べよう!
気づかないうちに疲労が蓄積し、そのまま倒れることもあるかもしれない…。そんな事態を防ぐために、今すぐできる疲労解消法を梶本先生に教えていただきました。
「疲労を解消するには疲労を起こしにくくするか、起こった疲労を早期に回復するという、2つの方法があります。少しでも疲労を抑制するには鶏の胸肉、カツオ、マグロに含まれているイミダペプチドという成分を摂取するのがオススメです。これには脳の自律神経の中枢に働きかけ、神経細胞の疲れを防いでくれる働きがあるのです。
イミダペプチドの摂取量の目安は1日あたり200mg。鶏の胸肉、マグロ、カツオのいずれかを100g摂っていただけばOKです。
最近はどこのコンビニでもサラダチキンという商品が惣菜コーナーに陳列されていますよね、それで摂るのもいいでしょう。ただ、1週間から2週間ほど続ける必要があるので、食事から摂取できないときはイミダペプチドのサプリメントを利用してもOKですよ」
そして、疲労の早期回復にはやっぱり睡眠が何より大事!とのこと。
「睡眠中に寝汗をかくのは自律神経が休んでいない証拠。自分にとって最も快適な室温を保つことが重要です。夏だったら温度設定をしてエアコンをつけたままにして寝たり、冬は乾燥に注意して暖房をつけ、足元を暖かくして休むことをおすすめします。
良質な睡眠を得るために、寝つきが悪い人は夜は蛍光灯のような明るい光ではなく間接照明を使った部屋で過ごし、寝る1時間前はスマホを見ないようにしましょう。
お風呂に関しては15分以上漬からないようにすること。長風呂によって汗をかき、余計に疲れをためてしまいます。
あと、寝る前にお酒を飲む方がいますが、寝入りは良くても睡眠の質が落ちるので、いいとはいえません。
さらに、これは女性に多いようですが、靴下を履いて寝ると逆に疲れをためてしまうんです。足の裏は体温調節をするため汗をかきやすいところ。靴下を履いていると熱の放散ができず、深い睡眠を損ないます。どうしても足が冷えて眠れない場合は、時間とともに冷めてくる湯たんぽを使用すると良いですよ」
仮眠をとって、仕事中でも疲労を解消!
梶本さんいわく、20代は自律神経の回復が早い分、疲労が見えないことが多いそう。しかし、疲労を回復させないまま無理を続けていると、突然うつ状態になって部屋から出れなくなり、引きこもるケースがあるようです。
「自律神経は人といる緊張状態で疲れるため、安心できる環境で一人になる時間をつくることが重要なのです」
仕事中に疲れを感じたときは、伏せ寝でも良いので20分ほど仮眠する。それによって疲労を解消し、仕事の効率も上がるのだとか。昼休みは同僚とワイワイランチもいいけど、疲れてるなと感じたら一人になって少し休むことも大事ですよ。
日々の中で疲労を感じたら早めに原因を突き止め解消し、カラダもココロも健康を維持しましょう!
(取材・文:真貝聡)
識者プロフィール
梶本修身(かじもと・おさみ)
東京疲労・睡眠クリニック院長。大阪市立大学医学部疲労医学講座特任教授
大阪大学大学院医学研究科修了。医学博士・医師。疲労医学研究の第一人者で、2003年からは、産官学連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」のリーダーを務める。
『すべての疲労は脳が原因1・2』(集英社新書)は、15万部を超えるベストセラー。「たけしの健康エンターテインメント みんなの家庭の医学」「世界一受けたい授業」「ホンマでっか!?TV」「ためしてガッテン」などテレビ出演も多数。
※この記事は2017/03/15にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
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