多くのビジネスパーソンにとって身近な飲み物、コーヒーとビール。
眠気覚ましや集中力UPを目的に仕事中にコーヒーを頻繁に飲む人や、仕事終わりにキンキンに冷えたビールで喉を潤す、なんて人は多いのではないでしょうか?
普段から何げなく飲んでいるコーヒーとビールですが、実は仕事のパフォーマンスを大きく上げるかもしれない秘められた力があるのだとか。解説してくれたのは『朝のコーヒー、夜のビールがよい仕事をつくる』の著者であり、マブチメディカルクリニックの院長を務める馬渕知子医師。
馬渕先生いわく、「コーヒーもビールも体のメカニズムに合わせて正しい飲み方を知れば、ビジネスパーソンにとって心強い味方になる」のだそう。そのメカニズムと具体的なメソッドについて伺いました。
パフォーマンスを最大化するコーヒーの飲み方
まずは、仕事の合間や打ち合わせ中に飲むことが多いコーヒーについて。効果を発揮するタイミングや飲み方を5つのポイントに絞り、くわしく解説していただきました。
1.コーヒーブレイクは計画的に取る
「コーヒーに含まれるカフェインには、交感神経を刺激し、脳や体を目覚めさせる働きがあります。でも、眠くなったら飲むのではその効果は発揮できません。コーヒーは『午前9時半~11時半と14時~17時までの間』に飲むのがベストです。これは、やる気ホルモンといわれるコルチゾールの分泌量が減る時間帯だから。反対にコルチゾールが活発に分泌される『午前8時~9時、12時~13時、17時半~18時半』にコーヒーを飲むと、体のリズムに逆らうことになり自己覚醒能力が弱まってしまいます」(馬渕知子さん:以下同じ)
2.プレゼン・商談は30分前のカフェインナップを
「プレゼンや商談の場で最高のパフォーマンスを発揮したいなら、30分前にコーヒーを飲むともっとも効果的です。これはコーヒーを飲んでから約20~30分後に、カフェインの覚醒効果が現れるから。コーヒーを1杯飲んだあと15~20分程度の仮眠を取れば、仮眠の疲労回復効果とコーヒーの覚醒効果をダブルで得ることができますよ」
3.お酒を飲んだ翌日は、ブラックよりカフェラテ
「アルコールを摂取した翌日は胃粘膜が荒れている状態になります。そんなときに刺激の強いブラックコーヒーを飲むと、胃粘膜にダメージを与えてしまいます。お酒を飲んだ翌日の午前中などは、胃の粘膜を保護し肝臓の機能を回復する作用がある牛乳成分などが含まれたカフェラテ系を飲むのがオススメです」
4.ストレスを感じたら、ソイラテを飲むべし
「大豆やミルクには、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料になるトリプトファンが多く含まれています。よって、イラッとしたときは豆乳が含まれたソイラテを飲むことで、気持ちを落ち着かせることができますよ」
5.コーヒーは1日3杯がベスト!
「風邪薬などと同じように、コーヒーも適量を飲むことで効果が見込めます。1日の目安はコーヒーカップで約3杯。カフェインを摂ると眠れなくなる人は、夕方までに飲み終えるようにしてください」
良いコンディションをつくるビールの飲み方
続いては、爽快感のあるのどごしで、就業後に至福のひと時を生み出してくれるビールについて。ビジネスにおける飲み会では欠かせない飲み物ともいえるビールですが、一方で二日酔いや将来的には痛風になる可能性があるなどのリスクも否めません。ついついビールを飲みすぎてしまう人は、ぜひ以下の5つのポイントを参考にしてみてください。
1.仕事終わりの1杯で、ほどよく疲れを癒やす
「交感神経に働きかけるコーヒーとは対照的に、ビールは副交感神経を優位にしてリラックス作用をもたらしてくれます。これはビールに含まれるホップとアルコールによる働きです。仕事を終えて体を休めたいタイミングでビールを飲めば、ほどよく疲れを癒やしてくれるのです。また、ビールに含まれる炭酸は胃腸をうまく動かしてくれる作用があるため、食前酒としても最適。なので、サラリーマンの『とりあえず生ビール!』という注文は、科学的に見ても正しいんです」
2.低カロリーのおつまみとセットにする
「ビールを飲むと太るといわれていますが、これは誤った情報。ビール自体はハイボールよりもカロリーやGI値(※)が低いので、むしろダイエットに向いている飲み物といってもよいでしょう。
それなのに太るといわれる要因は、揚げ物やピザなど味が濃く高カロリーの食べ物と相性が抜群だから。枝豆や豆腐など低カロリーのおつまみをチョイスすれば、ビールを飲んで太ることはないはずですよ」
※GI値……グリセミック・インデックスの略で、その食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを計ったもの
3.一口飲んで、3分待つ
「肝臓がアルコール分解態勢に入る前にビールをガブ飲みしてしまうと、どうしても酔いやすくなってしまいます。最初の一口を飲んだら、肝臓の分解態勢が整うまで3分ほど待ちましょう」
4.ビールを1杯飲むごとに水を1杯飲む
「アルコールには利尿作用があり、飲んでいる以上に尿として水分が出ていってしまうため、脱水症状に陥りやすいのです。そのため、ビールを1杯飲んだらそのあと同量の水を1杯飲むことで、この脱水症状を抑えることができます。アルコールと水を交互に飲むことを覚えておきましょう」
5.飲み会がある日は、昼間から水分補給をする
「夜にビールを飲むことが分かっている日は、昼間のうちから水分を多めに摂取しておくと、悪酔いを防ぐことができます。二日酔いに効果的だといわれているシジミのみそ汁やウコン、肝臓抽出物を含んだものなどをアルコール摂取前に飲んでおくといいですよ」
要注意! こんな飲み方は避けるべし
パフォーマンスを上げる飲み方がある一方で、逆にパフォーマンスを下げるかもしれない飲み方もあると馬渕先生は言います。ベストなコンディションを保つためには、以下の4つのポイントもしっかり頭に入れておきましょう。
1.空腹時に濃いめのコーヒーを飲む
「一番やってはいけない飲み方が、空腹時に濃いめのコーヒーを飲むこと。なぜなら、胃が荒れて胃炎を起こしやすくなってしまうからです」
2.甘い缶コーヒーやコーヒーフレッシュ入りのコーヒーを多飲する
「砂糖やミルクが使われた缶コーヒーには、糖質や化学成分が多く含まれていることがあります。また、コーヒーフレッシュには実は牛乳成分は使われておらず、植物性油脂や化学成分などでできています。甘い缶コーヒーとコーヒーフレッシュは、極力避けましょう」
3.眠れない夜にビールを飲む
「少量のお酒で心地よい睡眠を促す『ナイトキャップ』という方法は、有効であることが証明されています。ただし、利尿作用がありアルコール度数が低いビールはナイトキャップには不向き。ナイトキャップをするのであれば、ウイスキーやブランデーを多くても三口までとしましょう」
4.毎晩ビールを大量に飲む
「リラックス作用があるとはいえ、ビールを毎日大量に飲むことはオススメしません。日本人は分解酵素が少ない国民性ですので、個人差はありますが、週に1~2日は休肝日を設けるのがベストです」
賢く飲めば、ハイパフォーマンスを生み出せる
毎日の生活になじんでいて、何げなく口にしているコーヒー。そして、「とりあえず生」と親しまれているビール。この2つの飲み物の掛け合わせによってハイパフォーマンスを生み出せるなんて、ビジネスパーソンにとってうれしい事実ですよね。
これまで、体に悪いからという理由でコーヒーやビールを我慢してきた人も、今回ご紹介したことに気をつけることで堂々と飲むことができるのではないでしょうか? 正しい飲み方を取り入れて毎日最高の状態を維持できれば、おのずと仕事の成果も上がるはず。ぜひ、朝のコーヒーと夜のビールを上手に活用してみてください!
<取材・文:小林香織/編集:東京通信社>
識者プロフィール
馬渕知子(まぶち・ともこ)/マブチメディカルクリニック 院長
東京医科大学医学部医学科卒業後、同医科大学病院皮膚科学講座に所属しながら同病院に勤務。その後、マブチメディカルクリニックを開設、現在に至る(院長)。内科学・皮膚科学が専門であるが、あらゆる科と提携を結び、多面的に人間の体を総合的にサポートする医療を推進している。著書に『からだを救う水の飲み方、選び方』(講談社)、『朝のコーヒー、夜のビールがよい仕事をつくる』(クロスメディア・パブリッシング)など。
マブチメディカルクリニック公式ホームページ:http://mabuchiclinic.com/
※この記事は2017/10/19にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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